フィリピン経済の光と陰 – 平均世帯年収44万5千円、富裕層と貧困層の所得格差は10倍

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フィリピンの経済発展が目覚ましい。ブルームバーグによると2013年度の国内総生産(GDP)は過去最高値を更新し、前年比7.2%のプラス成長を達成した。インフレ率も4%と経済成長に伴い物価も次第に上昇してきている。これだけみると、さぞかしフィリピン人が豊かになっているかのように見えるが、実は経済発展の恩恵を受けているのは一部の富裕層に限定されている。

・フィリピン国家統計局(PSA)が2013年のクリスマスに発表したフィリピン人の世帯収入に関する統計を見て愕然とした。

フィリピン統計2012

まずは原文を載せておきます。フィリピン政府が発表したフィリピン人の世帯収入に関する統計報告書によると、2012年度のフィリピンの世帯年収の平均は23万5千ペソ、日本円で44万5千円だったということです。(2012年の円/ペソ為替レートの平均値 1ペソ=1.8928円で計算)

↓<参考>当記事の円/ペソ為替レートは2012年1月1日〜12月31日のインターバンクレートの平均値を使用します↓

フィリピンペソ2012年為替

・あなたが日本にいながら生活が大変だと思っているなら、フィリピン人の生活の大変さはそのさらに3倍〜6倍だ。

2010年度のデータで少しずれますが、参考までに日本の世帯収入の平均は538万円です。つまりフィリピンの世帯収入は日本の12分の1ということになります。物価は日本の4分の1と言われる言われるフィリピンですが、収入は実に12分の1。逆に言えば、フィリピン人の生活の大変さは日本の3倍ということになる。

日本世帯所得

もちろんこの計算は数値の前提がおかしいと言われるかもしれない。日本の世帯構成人数とフィリピンのそれとで開きがあるからだ。日本の世帯構成人数は平均で2.3厚生労働省 統計構成概要 第3章 世帯 第1-66表参照)、またTrade Union Congress of the Philippinesが2012年9月11日に公表したデータによるとフィリピンの世帯構成人数は4.6とされている。では、それぞれの国の世帯収入を世帯構成人数で割れば一人当たりの平均収入が出てくる。世帯構成員一人あたりの年間平均収入は日本が234万円、フィリピンは9万6千円となり、年間収入は一人あたり日本の24分の1ということになる。(この数字はあくまで世帯収入を構成人数で割ったもなので、主婦や退職者など無職の人にも所得を分配したという仮定)

改めてフィリピンにおける収入と物価のバランスを検証してみると、物価は日本の4分の1、収入は24分の1なので、生活の大変さは実に日本の6倍という事になる。さらに言えば、これらの計算には年金や国民皆保険などの健康保険(フィリピンには国民健康保険はない)を含む社会保障は加味していないので、実際はより過酷な生活実態であることは想像に難くない。

・富裕層と貧困層の所得格差は10倍。

ここまではすべて平均値で分析してきたが、フィリピン国内にも当然ながら所得の分布(格差)がある。2012年度に関して言えば、上位10%の富裕層の世帯年収は71万5千ペソ、日本円で135万3千円だった。一方下位10%の貧困層の世帯年収は6万9千ペソ、日本円で13万円だった。富裕層は平均の3倍稼ぎ、貧困層は平均の3分の1で、上位10%の富裕層と下位10%の貧困層の所得格差は10倍という実態が浮き彫りになった。

・最も稼ぐマニラと懐きびしいミンダナオ・イスラム圏、その差は3倍。

所得のばらつきはフィリピン国内でも地域ごとに確認できる。最も所得が高い地域は首都マニラ。平均世帯年収は37万9千ペソ、日本円で71万7千円。一方でミンダナオのイスラム圏は13万ペソ、日本円で24万6千円だった。この結果は単に首都が地方都市より3倍稼いだと結論づけるのは軽率かもしれない。そういった側面もたしかにあるが、ミンダナオのイスラム圏の事情も勘案しないと不合理になる。フィリピン南部ミンダナオのザンボアンガを中心としたイスラム圏にはモロ・イスラム解放戦線(MILF)があり、中央政府との軋轢がある。フィリピン中央政府が資本経済をベースに国家の舵取りをしてる中で、イスラム圏は軍事経済を貫いており、同じフィリピン国内であってもマクロ経済の意味での関わり、交わりが少ないため、経済格差(所得格差)が生じている。

・フィリピンの所得格差は暴動が起きるレベル

経済を測る物差しの一つにジニ係数という指標がある。ジニ係数は社会における所得分配の不平等さを表す。ジニ係数が0というのは所得が平等に国民に分配されている状態。またジニ係数が1に近づけば近づくほど不平等を表し、国民の中での不満が溜まっていく。一般的にジニ係数が0.4を超えると社会騒乱が起きるレベル(デモや暴徒化など)と言われている。そしてフィリピンのジニ係数は0.460で、境界線を超えている。日本のテレビ等では報道されていないが、マニラ首都圏のワーカーや郊外の農村の農夫達がベースアップを嘆願するためのデモをときどき起こしている。参考までに日本のジニ係数は2013年度は0.379で、社会保障(健康保険、年金)の給付を含んだ場合の係数だ。0.4は下回っているものの、1984年以降日本の所得格差は広がって来ており、仮に社会保障給付を含まない場合のジニ係数は0.553と危機的なレベルに達しており、日本とフィリピンの所得格差は実は暴動が起きるレベルにまで来ている事がわかる。

・フィリピンの所得の不平等は大都市を中心に起きている

フィリピンのジニ係数は全国平均が0.460だが、地域別に細かく見てみるとジニ係数が全国平均を超える地域のは3つ。マニラ首都圏、セブ・ボラカイのあるビサヤ地域、カガヤンデオロのある北ミンダナオだ。意外だったのは最も所得の不平等が起こっているのが、北ミンダナオ(0.484)だったこと。代表都市のカガヤンデオロは農業・漁業を中心とした街で高所得層は少ないものの所得の不平等がここまであるとは想定していなかった。一方で最も所得が平等だったのはミンダナオのイスラム圏だ。ここは中央政府との軋轢があり活況なフィリピン経済の恩恵を受けられないため、そもそも所得が低い。つまりミンダナオのイスラム圏で生活している人々の所得は平等に低所得ということになる。

・フィリピンの生活水準の低さを表すもう一つの指標

その国の経済状態・生活水準を測るもう一つの物差しにエンゲル係数がある。エンゲル係数は家計の消費に占める飲食費の割合のことで、一般にエンゲル係数の値が高いほど生活水準は低いとされる。これは、食費は体力維持の関係から極端な節約が困難とされるためであり、これをエンゲルの法則という。0.20以下は上流の水準、0.25はゆとりある生活、0.30はややゆとりのある生活水準、そして0.50はやっと生活できる状態をさす。ここまでフィリピンのライフスタンダードを様々な角度から見て来たが、最後にエンゲル係数を使ってフィリピンの生活実態を検証してみたい。フィリピン人家庭のエンゲル係数は平均で0.428となっており、人々の生活にゆとりがあまりない事が見て取れる。ちなみに日本は2013年度で0.235でここ15年間ほぼ横ばい。アメリカは0.193と先進国の中で圧倒的に低く、お隣韓国は0.329、トルコは0.355となっておりフィリピンの生活水準は諸外国に比べて圧倒的に低い。さらに言うとフィリピンのエンゲル係数は低所得者層(世帯年収の下位30%層)では0.62で、ゆとりがなくなる境界ラインの0.50を大きく上回っており、低所得者層の暮らしはまったく余裕がなく、むしろ危機的な状況であることがみてとれる。

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このように経済誌を賑わせるフィリピンの発展と高度経済成長の裏では、大半の国民が必ずしもその恩恵を受けられずに苦しい生活水準を強いられている。アメリカ同様にフィリピンも一部の上流階級とよばれる人たちが巨万の富を独占し、ほとんどの国民には富の再分配が行われていない。生活が苦しい状況でもいつも笑顔をふりまいてくれるフィリピン人の国民性にはいつも敬意を表したい。しかし、これからますます続いて行く経済成長の裏ではさらに格差が広がって行くことが予想される。彼らの笑顔に少しずつ余裕がなくなっていくかもしれないと思うと少々複雑な気分になってしまう。今回このような記事を書いた背景には、日本ではあまり報道されないフィリピンの実態を少しでも多くの方へ共有し、フィリピンに対する理解を少しでも深めていただけたらという想いからです。日本におけるフィリピンの存在は他の東南アジア諸国に比べて現状まだまだ低い(注目されていない)と思います。しかし、アジアで唯一の英語圏、明るい国民性、高いホスピタリティという三種の神器をもったフィリピン人は今後の日本の成長に大きく貢献してくれる国になると確信しています。経済や政治でまだまだ混乱のあるフィリピンですが、ポテンシャルはアジアのどの国よりも高いです。今後、日本とフィリピンが二人三脚で発展して行く事を願ってやみません。

Pinoy Smile

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